〈学美の世界 9〉「生きる力」発信する子どもたち/金順玉 2019年6月24日号

 

https://www.chosonsinbo.com/jp/2019/06/sinbo-j_190621/

 

子どもにとって「学校」は「社会」であり、その場を手持ちの力で生きている。学生美術展で出会う作品からは、子どもたちの「生きる力」が伝わってくる。

画用紙の四角い「枠」の中で子どもたちは能動的であり、かつ自由だ。あまりのストレートさに、観る側の私は圧倒され、ときに不安を覚える。広く残された白は「余白」なのか、「空白」なのか。真っ黒に塗られた画面は、暗さよりも「美しさ」を感じさせるのはなぜだろう。

子どもたちが生きている「社会」では常にいろんな事が起きていて、観る側は多種多様な表現から何をつかむことができるだろうか。ゆえに学生美術展の作品は何度観ても飽きない。

各地で開催される学生美術展覧会は、子どもたちの作品を通して歴史や文化、情緒などを語り合える場所である。そして作品が人を呼び、人と人をつなげる。まだまだ伝えきれていないところがたくさんあるが、子どもたちの「生きる力」をこれからもどんどん発信していきたい。

 

 

 作品1「友達」。46回学美 優秀賞。東京第1初中・初6(当時):康瑠那

 

黒い紙に描かれた小さなものたち(作品1)

 

真夜中に集まってパーティーをしているようだ。みなニコニコしていてとても楽しそう。作者も一緒におしゃべりをしながら描いたであろうその姿を思うと、とても愛らしい。一つひとつに作者の愛着心が感じられ、友達を大事に思う姿に心打たれる。

黒紙にキラキラペンの躊躇ない線描が美しさを奏でる。いつも作者の傍で見守っている「友達」を羨ましく思いながら「友達」とは何であろうと考える。

 

 

作品2「振り返る」。47回学美・金賞。東京第4初中・中3:金紅実

 

自分の「影」を描いた作品(作品2)

 

自画像とも言えるこの作品は、構図がとても美しく白い余白がいっそう、凛とした空間を引き立てている。自分の影に自身を投影して振り返る。「自分」をモチーフにした作品にはたくさん出会う。自分を何かの色や形で表現したり、姿をそのまま描いたりする。

「自分とは?」、いつかは直面するこの問いに、悩みながらも向き合って答えを模索する。作者も自分の姿を映し出している「影」を黙々と描きながら、自身に向けた「答え」を模索し、その対話を通して「答え」を見つけただろうか。

 

 

作品3「感情無限賞味期限」。46回学美・特別金賞。東京中高・高3(当時):朴美保

 

「感情無限賞味期限」、ついつい題名に目がいってしまう(作品3)

 

無限にある感情を味わうのは自らの行為で、そこに期限があるとすれば、その感情が消化し切ったときではないだろうかと、思いを張り巡らせるとても興味深い作品だ。

蝋や油と一緒に絵の具を混ぜ込んだマチエールは淡く透明で色鮮やか。人の感情に色があるとすれば、それは無限色と言ってよいだろう。そのマチエールの中に潜んでいる日付がついた紙。作者は、感情に賞味期限をつけてもその感情を無くすことはできない、消えても無くならない、目では見えない感情無限賞味期限の世界はたった今も形を変えながら進行しているという。

さまざまな感情が織りなす人間社会。感情が人を動かし、感情が人をつなぐ。

 

(在日朝鮮学生美術展中央審査委員・東京第4初中美術専任講師)