〈学美の世界 18〉心をわしづかみにする作品たち/朴蓮淑 2020.5.30


2015年度、学美審査会に16年ぶりに復帰しその日に受けた衝撃を今でもはっきり覚えている。作品が変貌していたのだ。活きいきとしカラフルで可愛らしく、ときにたくましく力強い作品、そしてこれは何を描いたのだろうと心をわしづかみにする作品たちが会場を埋め尽くしていた。

回を重ねるごとに作品群たちがこの展示会は校内展示に留まっていてはだめだと迫ってきた。何一つノウハウをもたないまま、当時同僚だった教員と共に反対を押し切って必死にギャラリー展示会の準備に取り掛かった。朝鮮学校を支え、学美をサポートしてくださる日本の方たちのご尽力により今年も2月に北海道展が開催された。

あるサポートメンバーにどうして身を粉にして朝鮮学校を支援してくださるのか伺ってみると「学校が素晴らしいから、子どもたちがすてきだから」とおっしゃるのだ。そんなすてきな子どもたちの心にはウリハッキョや友だちはどの様に映っているか見てみよう。

作品1「亀が通う学校のクラゲ先生」。第45回学生美術展・優秀賞。北海道初中高初級部1年:李翰修(当時)
子どもの絵はわからないという大人がいるがほんの少し立ち止まってみると子どもの心模様が見えてくる(作品1)。
3時を示す大時計と校舎に描かれた小時計。先生の姿は大きなクラゲとして表現され、頭には赤い亀を乗せている。所々に登場する人物は新しく出会った友だちか、それとも自身であろうか。1年生になり初めて通うウリハッキョでタイムスケジュールもわからないまま過ごし、下校時間が待ち遠しいのだろうか。
いや、じっくり見るとリズミカルに走り回る線描写はドキドキわくわくする気持ちの表れかもしれない。どちらにせよ主の様にゆっくり進む作者の気持ちを読み取ってみた。
作品2「みんなで宇宙旅行」。第43回学生美術展・優秀賞。北海道初中高初級部3年:李大湖(当時)
持ち帰ることなく玄関の隅っこに静かに置かれている。一方、持ち主はときに取っ組み合いのケンカをするやんちゃな子ども。一時も黙って座っていることはない。作者は静かな傘から何を想像するのだろう。
一点を見つめ静かに筆を走らせる。墨の香りが漂うなか第一声は「画用紙が小さくてはみ出しちゃうよ」。躊躇することなくもう一枚差し出した。
夢に見た宇宙へ勢いよく飛び出す傘。無数の星とUFO。目を凝らすと左右上下にたくさんの友達が座っている。ケンカもするがいつも傍に居るのだろう。
作品3「探し物する僕ら」。第47回学生美術展・優秀賞北海道初中高中級部1年:曺泰鉉(当時)
静けさが漂う暗闇。窓には大きすぎる月(作品3)。
ドアの隙間からは青空が覗き陽ざしが差し込んでいる。そこには闇へと向かう小さな僕たち。
天真爛漫だった幼少期を経て中級部へ上がると闇が多く描かれる。それは最近耳にする中二病という自己構築されたものなのか、それとも外的要因によるものなのか。しかしこの作品の闇からはどこか楽しさを感じる。明るい日常にいながら自ら闇の中へ入る。肝試しのスリルと重ね合わせたようだ。
友だちを連れ添い何を探すのだろう。大きな月明かりの様にウリハッキョはいつも傍にいるよと子どもたちの道標を照らし続けたい。
(在日朝鮮学生美術展中央審査委員・北海道初中高美術専任講師)